量子熱電技術

熱電変換とは熱電変換素子を使って熱を電気に直接変換出来る方法であり、タービンなど大型の装置を用いて電気を作るのに比べ小型で静音、メンテナンスフリーなどの利点を持ちます。そのため、省エネ化やIoT機器の自立電源として注目されている技術の一つです。

 

そのような熱電変換素子の研究開発には半世紀以上の歴史がありますが、材料の毒性、希少性、脆弱性、あるいは変換効率の低さのため、依然広く普及するに至っておりません。これら既存の熱電変換技術はゼーベック効果と呼ばれる物理現象に基づいておりますが(図1a)、我々はそれとは全く異なる磁気熱電効果(異常ネルンスト効果、図1b)に着目した熱電変換に関する研究を行っております。

従来の熱電変換では熱流と同じ方向に発電が起きるため、p-n接合と呼ばれる複雑な立体構造を作る必要がありました。そのため、接合によるロス、製造コスト、大面積化などに課題がありました。磁気熱電効果では熱流方向に垂直に発電するため、多数の接合や立体構造を作る必要がなく、テープ化などにより熱源に沿った大面積の発電などが容易に行える利点があります。また性能指数ZTに対する変換効率も従来型熱電技術に比べ大きくなると言われております。

中辻・酒井研究室ではこれまで磁気熱電材料の開発で飛躍的な成果を出してきました。現在これらの材料を用いて、磁気熱電効果に基づく革新的な熱電モジュール、熱流センサーの開発を推進しております。

図1 ゼーベック効果(a)と異常ネルンスト効果(b)。起電力の方向は、ゼーベック効果では

温度勾配と平行であるが、異常ネルンスト効果では温度勾配と磁化に垂直である。

 

図2 (a) 従来型熱電モジュール(ペルチエ素子)と (b)異常ネルンスト効果を使った

新しい熱電モジュール。従来技術では P型とN型の半導体の柱を交互に並べた立体的な

形状をしており、大型化や高集積化に伴う製造コストの増加が1つの問題である。

新技術では立体構造は不要で、テープ化などにより熱源に沿った大面積の発電などが

容易に行えるなどの利点がある。

【関連研究】
新技術説明会講演「磁性材料を用いた革新的熱電変換技術とその熱電モジュール・熱流センサー応用 」youtube
A. Sakai, S. Minami, T. Koretsune, T. Chen, T. Higo, et al., Nature 581, 53 (2020).
A. Sakai et al., Nature Physics 14, 1119–1124 (2018).
M. Ikhlas et al., Nature Physics 13, 1085-1090 (2017).

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